それは内宇宙からやってきた。

感謝します。失読な僕に言葉をくれた、あなたに。

伊藤さんへ、仕事辞めます

拝啓
伊藤計劃

この間、母校でぼくの仕事についての話をしました。
どうして、ぼくが葬儀屋になったのかを。
全てあなたが理由です。
生徒の方々には内緒にしました。
高校一年の時にジュンク堂で、あなたの第一位相を、あなたのハーモニーを、あなたのMGS4ノベライズを手に取った時からぼくはおかしくなってしまいました。
死に興味が湧いたのです。
人生が、戦争が、殺戮が、弔いが
ぼくには身近な概念になったのです。

ぼくは7年間、死者の物語で仕事をして来ました。
亡くなった方々は語らずにして物語をぼくに教えてくれました。葬儀という社会システムが死者を雄弁に物語るのです。そこに本人の意思が存在しないとしても。
あなたの死が、ぼくの人生のテーマでした。
葬儀屋として、死者の物語に触れ続ける事であなたに近づける気がしたのです。
天職とも思えた葬儀屋をぼくは辞めることにしました。決して、仕事が嫌になったわけではないのです。
ぼくが7年間、誇りを持って培っていた知識も技術も全て失います。
ぼくは、デジタルに立ち向かいます。
あなたが仕事としたホームページを作るという仕事にも立ち向かいます。
もちろん、ホームページなんて作ったことも知識もありません。
それでも、伊藤計劃というテーマを追求する為に、ぼくはインターネットに向かわなければいけないのです。
全ては、あなたという存在を忘れない為に。
どうか、ぼくがあなたを忘れませんように。
祈ります。
ありがとうございました。
敬具

ああ、これからどうやって食っていこうか。
楽しみだ。
なんたってぼくは何もできない。
ゼロなのだから。

お題「#この1年の変化


ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

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